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株式の相続について 

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【事案】
 ・株式会社デップス
 ・取締役は、父、叔父、長男、二男の4名
 ・父は、数年前に社長を退き、会長となった。
 ・父は、長男に社長を継がせたかったが、当時、長男が若かったため、叔父が代表取締役に就任。
 ・会社の資産状況は別紙の通り
 ・発行済株式総数1000株
   父   400株
   叔父 300株
   長男 200株
   次男 100株
 ・平成18年9月1日に父死亡
 ・遺言書無し
 ・父の相続人は、長男、二男のほか、長女、二女の計4人だが、長女と二女は会社経営には
  関心が無く、金銭を必要としている。


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【二男の相談】
  会社の経営を巡って、叔父と長男が対立しており、今度の株主総会では会社の経営方針について重要な議題が提出されそうである。自分は、父の株式について、議決権行使はどうすればよいか?

【相続と株式承継】
1,株式の取得と会社に対する権利行使
 (1)株主名簿の記載
    株式についての権利の移転は、株主名簿に記載しなければ会社に対して対抗できない
    (会社法130条1項、商法206条1項)。
   例:株主としての議決権行使、配当請求

   【事例】
     長男、二男らは父名義のままでは、株式取得を会社に対抗できない。
 
(2)譲渡制限
    譲渡に会社の承認を要する株式(会社法108条1項4号)の場合、会社の定款に株式
    の譲渡制限の規定(商法204条1項但書)がある場合
          ↓
    相続は、包括承継であるから、この規定は適用されない。
          ↓
    相続人は、取締役会の承認なく、株式を取得できる。

2,法定相続による株式の取得
 (1)株式は当然分割か?
   相続預金は金銭債権であり、判例は、相続開始とともに当然に法定相続分に応じて各相続
   人に分割されるとしているが、株式は、金銭債権ではなく、相続開始により法定相続分に応
   じて当然に分割されるものではない(大阪地判昭和61年5月7日)。
       ↓
   各相続人は、自己の法定相続分に応じた数の株式を取得したことにならない。
       ↓
   単独で、会社に対して名義書換請求をすることはできない。

  【事例】
   長男、二男は、長女らとの分割協議がまとまらないうちは、父名義の株式のうち、100株ず
   つの名義書換請求不可。

(2)分割の合意がまとまるまでは、「準共有」(民法264条)になる。
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる(民法
   249条)のであり、共有物の分割(民法256条以下)がなされない限り、単独では、
   持分を処分・変更等できない。
   ちなみに、共有物の管理は、持分の価格の過半数で決する(民法252条)とされ、
   共有者間において権利行使者を指定するに当たっては、持分の価格に従いその
   過半数をもってこれを決することができる(最高裁平成9年1月28日判決)。
 (3)分割の方法
  遺産分割協議、調停、審判
  共有物分割請求

  【事例】
    父名義の株式を長男がすべて取得したいのであれば、他の兄弟姉妹に対して、
    それに代わる現金など(代価)を支払わなければならない。

3,相続による株式の名義書換手続
 (1)遺産分割又は相続人全員により特定の者が取得する合意ができた場合
   会社に以下の書類を提出する。
   ①株券(発行してある場合)
   ②株式名義書換請求書
   ③株主票
   ④被相続人の除籍謄本及び相続人全員の戸籍謄本
   ⑤相続人全員の同意書又は遺産分割協議書と全員の印鑑証明書

 (2)合意ができず、又は複数の者の共有とする合意ができた場合
   ①~⑥に加え、以下の書類を提出する。
   ⑦共有代表者届

 (3)共有者による権利の行使
    共有者は、当該株式についての権利を行使する者1人を定め、会社に対し、その者の
    氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使できない
    (会社法106条、126条3項、商法203条2項)。

(4)指定と通知がない場合に、会社が共同相続人の1人に権利行使をさせることが
  許されるか?

   商法203条2項(旧法)についての裁判例
    共有に属する株式につき議決権行使者の指定及び会社に対する通知を欠くときは、
    共有者全員が議決権を共同して行使する場合を除き、会社の側から議決権の行使を
    認めることは許されない(最高裁平成11年12月14日判決)
       ↓ 
   会社法106条では、
    「ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りではない。」
    と規定しており、会社の側から議決権行使を認めることが許される。
    共有者間の合意を確認せずに、会社が別の者に議決権行使を認めた場合、同意した
    ことによるリスクは会社の負担
    会社は、間違って議決権行使された者から損害賠償請求をされる可能性あり株主総会
    決議の取消事由には該当しない。

  【事例】
    会社(代表取締役である叔父)が二男に権利行使を認め、新たな取締役を選任し、
    長男を解任する。(役員の登記)   

4,相続人に対する売渡しの請求(会社法174条以下)
 (1)従来の制度
    株主が死亡して、好ましくない相続人が取得する場合、従前は、包括承継なので
    どうしようもなかった(譲渡制限の規定は適用されない)。
       ↓
 (2)今回の会社法によって、新たに設けられた制度
    定款に、相続により株式を取得した者に対し、当該株式を会社に売り渡すことを請求
    できる旨を定めることができるようになった(174条)。
    合併や吸収分割の場合も対象になる
(3)手続
    売渡し請求の都度、株主総会の特別決議必要
    (175条1項、309条2項)

   *特別決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主
     が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数が必要
     売渡し請求の株式を有する株主は、この株主総会では議決権を行使できない
     (175条2項)。

(4)注意点
    オーナー株主が亡くなったときに、少数株主がオーナーの相続人を排除しようとする
    場合にも利用されうる制度であり、両刃の剣ということに要注意。
    定款の規定は、後付けでもOK。
  【事例】
   ①父名義の株式を長男、長男、二男、長女、次女がそれぞれ100株ずつ相続により取得
     することになった場合、会社が、長女、次女に対して売渡し請求することの可否。
       ↓
    長女の取得する100株を除いた900株のうち、600株の賛成で特別決議は可決される。
    二女についても同様。
   ②長男が400株全部を取得した場合、会社から長男に対して売渡し請求することの可否
     特別決議は、父名義の株式400株を除いた600株のうち、叔父と二男を合計した
     400株で可決される。

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